電子の波動関数を省略なく導く(1)

シュレーディンガー方程式を解き、球面調和関数Y(θ,Φ)をルジャンドル多項式で表す

球面調和関数Y(θ,Φ)とルジャンドル多項式

 静岡数学研究会は、『趣味で量子力学』(広江克彦著、理工図書)、同②をテキストとして量子力学の学習に取り組んできた。物理の知識を十分にもっている会員は少ないので、このテキストがなかったら、量子力学に対するチャレンジはできなかっただろうと思われるほどに、このテキストには満足している。この『趣味で量子力学』では、原子核の周りを回る電子の波動方程式を求める第1章から始まる。考え方のモチーフをうまく説明していく叙述はこの著者独特のものだ。

 

 この本では、シュレーディンガー方程式から導き出された球面調和関数Y(θ,φ)動径方向の関数R(r)が満たす微分方程式を示し、ルジャンドル多項式ラゲールの多項式によって与えられる解の結果だけを示し、次に進んでいく。(他の物理の本でもこの形のものが多いように思われる。)解が求められる詳しい数学的経過を最初から説明したのでは、本全体の叙述のリズムが壊れ、読者に歓迎されないだろう。その意味でも、この本の叙述には満足している。しかし、同時に詳しい数学的経過も学びたいとも考えた。この数学的経過に焦点を絞った本なども出版されているが、詳しい数学的展開を省略なしでの形で、私たちがどう補って勉強していったかを記すことで、少しでも参考になる方がいるのではないか、と考えて以下の部分を記すことにしました。

 

質量m、電荷eの1個の電子が、質量M、電荷Zeの原子核クーロン力によって束縛されている。このときの電子の波動方程式を、シュレーディンガー方程式を解くことで求めていく。

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 以上微分方程式(Ⅱ)、(Ⅲ)を解いて、球面調和関数を求める数学的経過を示した。もちろん別の様々な方法もあるようで、私たちの方法は余り洗練されていない。ただ、確実にこのようにすれば経過を辿れますよ、という記述が参考になる方もいるのではないかと考えて、このレポートを作成した。

 これに続いて『電子の波動関数を省略なく導く(2)動径方向の関数とラゲールの多項式のレポートを読んでいただければ、微分方程式(Ⅰ)の解法を知ることができ、電子の波動関数を求める数学的経過が理解できる。

 読みにくいレポートにお付き合い下さりありがとうございました。


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   電子の波動方程式を省略なく導く(2)

        調和振動子の波動関数を省略なく導く